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セットアッパーとクローザー、本当に価値が高いのはどっちか

セーブとホールドという別カテゴリで集計される 8 回・9 回の救援投手たち。実際の役割の重さ、登板する局面の質、そして年俸を左右する評価の歴史を、近年の NPB データから整理する。

2026-05-29読了 9Xでシェア

投手の役割は大きく先発と救援に分かれ、救援の中でもさらに「ロング」「ミドル」「セットアッパー(8 回)」「クローザー(9 回)」と細分化される。とくに 8 回と 9 回を担う二人は、シーズンを通じてチームの勝ち星を直接守る存在として扱われ、年俸も特別なラインに乗ることが多い。

しかし、「セーブ」と「ホールド」という別カテゴリで評価され続けてきた両者の実際の負荷とチームへの貢献は、本当に分けて語るほど違うものなのか。本記事では、過去 5 シーズンの NPB データから、この問いをデータで眺め直してみる。

役割の定義をおさらいする

まずは前提の整理。セーブは「9 回を含む登板で、リードが 3 点以内のままチームを勝たせた」場合に記録され、ホールドは「リードが付いた状態で登板し、リードを保ったまま降板した」場合に記録される。同じ登板で両方記録されることはなく、役割と球場の状況で振り分けられる。

つまり、両者の差は「投げているイニングの番号」と「降板時のゲームが終わるか否か」であって、登板した時点の負荷(投球数や走者の有無)には本質的な区別はない。

過去 5 シーズン、両ロールの「数」を見る

BaseballHub のデータから、各シーズンに「20 セーブ以上を記録したクローザー級」と「25 ホールド以上を記録したセットアッパー級」の人数を抜き出した。各シーズンの最高値(最多セーブ/最多ホールド)も並べた。

シーズン20S 以上 (CL級)25H 以上 (SU級)最多セーブ最多ホールド
2025715マルティネス 46大勢 46
20241310マルティネス 43松山晋也 41
20231211松井裕樹 39ペルドモ 41
20221211マルティネス 39湯浅京己 43

12 球団あるリーグで「セーブ 20 以上のクローザー」が毎年 7〜13 人、「ホールド 25 以上のセットアッパー」が 10〜15 人。一見すると分布も似ている。最多記録のレンジも、年によってばらつきはあるが、セーブ 39〜46、ホールド 41〜46 と、ほぼ重なるレンジに収まっている。

投球イニング・登板数で見直すと、どちらが「働き者」か

セーブとホールドはそれぞれ「結果」を数える指標で、登板の量や球数を測っているわけではない。ところが、実際の負荷を見ると、セットアッパーのほうが登板数も投球イニングも多いのが普通だ。クローザーが「9 回限定・1 イニング厳守」で年間 50〜55 登板に収まるのに対して、セットアッパーは「7 回〜8 回をまたぐ」「同点のままでも投入される」など起用範囲が広い。

感覚的に言えば、クローザーは「ピンポイント高出力」、セットアッパーは「持久戦の中軸」。どちらも勝ち星を守るが、削られ方が違う。

WAR の文脈ではどちらが高いか

本サイトでは投手 WAR は推定値の表示を控えている(先発と異なり、救援投手の WAR をOPS ベースで導けないため)。一般論として、MLB の研究では「同じ防御率なら、セットアッパーのほうがイニング数が多いぶん WAR の上振れが起きやすい」ことが知られている。つまり、セーブ 40 のクローザーと、ホールド 40 のセットアッパーが並んでいたら、投球イニングの長いセットアッパーのほうが、実は WAR では上回る可能性が高い、ということだ。

もちろん、これは「9 回のプレッシャー」を数値化できないことを差し引いた話。1 点差・走者三塁で 9 回マウンドに上がる球数 15 球と、3 点差・無走者で 8 回頭から投げる球数 15 球は、選手心理としても見る側の興奮としても、まったく違う体験だ。データだけで割り切れない部分は残る。

では、評価の仕方をどう変えるべきか

セーブの数を持って「絶対的なクローザー」と言うのは、もう少し慎重になっていい。クローザーの仕事は確かに最後の 3 アウトを取ることだが、それは「振り分けた結果としての 9 回」であり、「8 回のセットアッパーが先に投げたから 9 回までもつれた」「9 回でも降板したらホールド扱い」といった、ロール定義の影響が大きい。

ファンとして読み解くなら、「セーブ/ホールド」のカテゴリを横並びに比較するのが安全だ。

  • 登板数(同じロールでも 50 vs 65 で負荷は別物)
  • 投球回(1 イニング厳守か、複数回またぐか)
  • WHIP と被 OPS(純粋な抑え込み力)
  • シーズン後半の数字(夏場に削れているか)

まとめ

セットアッパーとクローザーは、ロール名の派手さほど構造的に違うわけではない。セーブの方が劇的に注目される一方で、年間の投球イニング・登板数・状況対応の幅ではセットアッパーのほうが「働き者」であることが多い。

BaseballHub では、両者を別レポートにせず同じ「救援投手レポート」内で並列に扱っている。「セーブが多い人」だけでなく、「ホールドの中身(イニング・WHIP)が良い人」も同じ画面で見られるようになっているので、来季の年俸予想やトレード議論の補助線として使ってみてほしい。

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