シーズン通算のWARランキングには、ひとつ見えないものがある。「いつ積んだか」だ。開幕ダッシュに成功して夏場は平凡な選手と、開幕につまずいて6月から別人になった選手が、通算では同じ数字に見える。ファンが知りたいのはむしろ「いまどっちに向かっているか」のほうだろう。
BaseballHub は毎朝、全選手のスタッツをスナップショットとして保存している。5月23日から8月15日までに貯まった記録は24時点(7月末以降は毎日)。この期間の始点と終点を突き合わせれば、「この12週間で誰がどれだけ積んだか」を実測で出せる。対象はこの間に15試合以上出場を増やした選手に絞った。
野手:この12週間の WAR 積み上げ TOP10
| Δ WAR | 選手 | 5/23 → 8/15 | 出場増 | 現在の wRC+ |
|---|---|---|---|---|
| +2.3 | 近藤 健介(ソフトバンク) | 1.3 → 3.6 | +59試合 | 165 |
| +2.2 | レイエス(日本ハム) | 1.0 → 3.2 | +60試合 | 155 |
| +1.9 | 森下 翔太(阪神) | 1.3 → 3.2 | +59試合 | 155 |
| +1.8 | 正木 智也(ソフトバンク) | 0.1 → 1.9 | +60試合 | 150 |
| +1.8 | 山口 航輝(ロッテ) | 0.1 → 1.9 | +54試合 | 144 |
| +1.7 | マッカスカー(楽天) | 0.0 → 1.7 | +54試合 | 141 |
| +1.7 | 栗原 陵矢(ソフトバンク) | 1.1 → 2.8 | +60試合 | 144 |
| +1.7 | 佐藤 輝明(阪神) | 2.2 → 3.9 | +59試合 | 172 |
| +1.6 | 紅林 弘太郎(オリックス) | 0.2 → 1.8 | +59試合 | 118 |
| +1.5 | 牧 秀悟(DeNA) | 0.6 → 2.1 | +48試合 | 154 |
首位は近藤健介の +2.3。5月下旬の時点で 1.3 と例年よりおとなしい数字だったが、12週間でほぼ3倍に積み上げ、通算でもリーグ上位へ戻ってきた。注目したいのは表の4〜6位、正木智也・山口航輝・マッカスカーの3人だ。5月下旬の WAR はいずれも実質ゼロ。つまりこの3人は「開幕時には戦力として数えられていなかった選手」で、夏場のレギュラー定着だけでここまで来た。通算ランキングを眺めても、彼らはまだ中位に埋もれていて目立たない。差分で見て初めて浮かび上がる顔ぶれである。
紅林弘太郎の +1.6 は少し毛色が違う。wRC+ 118 は表内で最も低く、打撃だけならこの位置に来ない。遊撃手としてほぼ全試合に出続けたことによる守備・出場価値の積み上げが効いており、「打撃成績の割に WAR が高い」タイプの典型例といえる。
投手:防御率を最も改善した8人(30イニング以上)
| Δ 防御率 | 選手 | 5/23 → 8/15 | 投球回増 |
|---|---|---|---|
| -3.37 | 木下 里都(阪神) | 5.40 → 2.03 | +28回 |
| -2.84 | 杉山 一樹(ソフトバンク) | 6.00 → 3.16 | +28回 |
| -2.35 | 伊勢 大夢(DeNA) | 5.19 → 2.84 | +23回 |
| -2.32 | 鈴木 豪太(ソフトバンク) | 4.15 → 1.83 | +21回 |
| -1.58 | 山﨑 颯一郎(オリックス) | 4.24 → 2.66 | +23回 |
| -1.34 | 甲斐野 央(西武) | 3.07 → 1.73 | +27回 |
| -1.08 | レイノルズ(DeNA) | 2.25 → 1.17 | +26回 |
| -1.06 | 津森 宥紀(ソフトバンク) | 2.45 → 1.39 | +21回 |
救援投手の防御率は母数が小さいぶん振れ幅が大きい。5月時点の 5.40 や 6.00 という数字は、序盤の数試合の failed outing を引きずったものだ。だからこの表は「投球内容が3点分良くなった」と読むより、「序盤の悪い印象が実態に追い越された」と読むほうが正確だろう。それでも木下里都の 5.40 → 2.03 は、28イニングをほぼ無失点で通さないと作れない数字で、印象の修正だけでは説明がつかない。
逆方向も一応見ておく
同じ差分を下からめくると、出場を続けながら WAR を減らした選手も一定数いる。WAR は「控え選手と比べた上積み」なので、出場しても代替水準を下回る成績なら数字は目減りする。ただし該当者の多くは出場機会をつかんだばかりの若手で、サンプルの少なさによる振れも大きい。個名を並べて論評するには時期尚早なので、ここでは現象の指摘にとどめる。
方法論と注意書き
- データは BaseballHub が毎朝保存している日次スナップショット(2026-05-23〜08-15、24時点)の始点・終点差分。
- WAR・wRC+ は当サイトの OPS ベース推定値で、守備指標を精密に持つ他社算出とは差がある(誤差 ±15% 程度を想定)。
- 対象は期間中に15試合(投手は約20イニング)以上を積んだ選手のみ。故障離脱者の「減少」は出場減によるもので、ここでは扱わない。
- 差分の日次推移は「いま数字が動いている選手」(/trending)で毎日更新している。